高校生・受験生のための研究紹介

情報工学コース

言葉がわかる人工知能をつくる
~コンピュータは便利な道具から身近なパートナーへ

コンピュータが言葉を理解する!
ソーシャルメディアで広がる可能性

言葉がわかる人工知能をつくる~コンピュータは便利な道具から身近なパートナーへ

「庭に洗濯物を干したら、とたんに雨が降ってきた」と言われたら、あなたは何と答えますか。アンラッキーな出来事だとすぐに理解して、「あ〜あ、災難だったね」みたいに答えるかもしれません。私たちは何気ない会話の中でも知識をフル回転させて、まわりの状況や相手の気持ちまで考えながらコミュニケーションしています。

言葉がわかるコンピュータをつくる、これが私の大きな目標です。言葉の字面だけをとらえるのではなく、人間のように言葉の背後にある物事を推測する、つまり行間が読めるコンピュータ。実現すれば、コンピュータは単なる道具からコミュニケーションの相手にもなり、くらしや企業活動のあらゆるシーンで活用されることでしょう。私たちはそのための技術研究に取り組んでいます。

最大の課題は、コンピュータに知識を与えること。人間はさまざまな経験から知識や常識を手に入れて言葉を理解しますが、コンピュータは自分では経験できませんからね。そこに風穴をあけたのが、昨今のソーシャルメディア社会。だれもがネットに日々の経験を書きつづるようになり、世界規模で情報の蓄積が進んでいます。そこから必要な知識をあつめてコンピュータに追体験させ、行間を読むための推論をさせる、そんな可能性がぐんと広がってきたんです。

言葉がわかる人工知能をつくる~コンピュータは便利な道具から身近なパートナーへ 言葉がわかる人工知能をつくる~コンピュータは便利な道具から身近なパートナーへ

私たちが最近開発した仮想推論エンジンは、それまで1行あたり7分かかっていた解析をわずか0.4秒で実行することができます。現在、アメリカの研究機関や国内の企業とこうした技術を活用するための共同研究を進めています。世界最先端のエンジンが夢のコンピュータへの一歩になれば嬉しいです。

ロボットづくりも応用分野の一つ。私たちの学科にはロボットに関連する音声認識や画像認識、機械学習といった多彩な研究室があり、相互連携も始まっています。ここで生まれた賢いロボットから「元気出して!明日は晴れるよ。」なんて気の利いた答えが返ってくる時代も来るかもしれません。

私はもともと人と関わることが好きで、言葉に興味がありました。そこに数学や情報科学のエッセンスが加わって、コンピュータに言葉を教えるという心躍る研究領域に出会いました。ワクワクできるものと出会いは、何にもかえがたい成長の糧です。大学に入ったらぜひ、そんな“ワクワクの種”を見つけてください。

Profile

乾 健太郎 教授

乾 健太郎 教授
Kentaro Inui

東北大学へ2010年に着任して以来、研究室は自然言語処理分野で国内最大規模に成長。
世界最速の仮説推論システムなど、その実績は世界から注目を集めています。

専門は自然言語処理、人工知能。言語情報や知識の自動編集、それを支える自然言語処理技術の研究に従事。
千葉県立千葉高等学校卒業。1990年東京工業大学工学部卒業、1995年同大学情報理工学研究科博士課程修了。同大学助手、九州工業大学助教授、奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て、2010年より現職。
情報処理学会自然言語処理研究会主査、言語処理学会論文誌副編集長。人工知能学会論文賞、言語処理学会論文賞、国際会議ACL、EACL、CICLING等優秀論文賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞等、受賞。