高校生・受験生のための研究紹介

通信工学コース

人と機械の豊かな
関係づくりを目指す
未来型コミュニケーション

ロボットからエンターテイメントまで
幅広い分野に応用が広がる音声対話技術

人と機械の豊かな関係づくりを目指す未来型コミュニケーション

人の声、楽器の音色、家電やコンピュータの音など、私たちの暮らしはさまざまな「音」であふれています。子どもからお年寄りまで誰もが使いこなせる音は、人が関わるコミュニケーションに欠かせないもの。私の研究室では、声、音楽、言葉といった音を中心とする幅広い研究を通し、高度なコミュニケーション社会を担う技術システムの開発を行っています。

その柱の一つが、映画やアニメの世界のような人と機械の対話を目指す「音声対話システム」です。最近はスマホの音声操作の普及やホームロボットの発売が相次ぎ、音声対話システムへの期待はますます高まっています。しかし、人間同士の対話にはほど遠いのが現実。なぜなら、相手の反応を見て気持ちを考えること、つまり“空気を読む”ことが機械には難しいからです。そこで私たちは、音声と顔の表情やジェスチャーなどの情報を組み合わせ、より自然で柔軟な機械とのコミュニケーション実現に取り組んでいるところです。

人と機械の豊かな関係づくりを目指す未来型コミュニケーション 人と機械の豊かな関係づくりを目指す未来型コミュニケーション

音声対話に必要なのは、声を聞き取る「耳」の部分、声を出す「口」の部分、そして言われたことについて考え最適な答えを作る「頭」の部分の3つの技術。これらを総合し自由に対話するシステムを作ることができるのは、日本でも私たちを含め限られたグループしかいません。将来は一家に1台と言われるコミュニケーションロボットにも不可欠な技術であるため、私たちはロボット開発を行う大阪工大のチームとタッグを組んだ研究も進めています。今年は「ロボカップ@ホーム」に共同参戦し、国内外の8チーム中第1位という好成績を収めることができました。

もう一つ、私たちの研究の特徴に挙げられるのが「音楽情報処理」。音楽ネット配信の普及で産業応用が拡大し、とても盛り上がっている分野です。歌の熱唱度測定やハミング楽曲検索など、今後のエンターテイメントを支える技術への挑戦は、音楽好きの若い皆さんにとって興味の広がる研究ではないでしょうか。

ほかにも、グローバル社会をかなえる音声自動翻訳システムなど、音の研究は世の中のニーズに合わせた新しい技術を創り出す魅力を持っています。人と機械の新たな関係は、人と人の新たな関係づくりへと広がるはず。いずれは時間も、空間も、言語さえも超えた、快適で心地よいコミュニケーションを実現したい、それが私たちの究極の夢です。

Profile

伊藤 彰則 教授

伊藤 彰則 教授
Akinori Ito

音声情報を中心に視覚や触覚など様々な情報を利用して人と機械とのコミュニケーションを行うマルチモーダルインターフェース研究の第一人者。開発した音声対話システムを実装したロボットはロボカップ@ホームで2位に輝く。

専門は音声言語処理、マルチメディア信号処理、音楽情報処理など。
宮城県仙台第二高等学校卒業。1986年東北大学工学部卒業、1991年同大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。東北大学助手、山形大学助教授、東北大学准教授を経て、2010年より東北大学大学院工学研究科教授。
Best Paper Award of International Conference on Natural Language Processing and Knowledge Engineering(2008) 、Best Paper Award of International Conference on Intelligent Information Hiding and Multimedia Signal Processing(2007)などを受賞。日本音響学会編集委員長、情報処理学会音声言語情報処理研究会主査。